【信用取引コラム 実践編】
 第5回 PER・PBRと信用取引

2015.01.13

第4回で一気に具体的な戦術論になって、結論じみた話になってしまいましたが、それだけ信用取引における売りは重要で、これは第10回(最終回)の、信用取引で最も重要な事項へ繋がって行きますが、ここでは元に戻って信用取引の実践における特徴をもう少し考えて行きましょう。基本的な事に終始するかもしれませんが、それをしっかり身に着けると、スポーツで言えば「軸のしっかりしたフォーム」になると思います。

第1回 信用取引と「時」でも述べましたが、トレーディング理論から言うと、安いところを買って高いところを売るのが現物取引で、高いところを買ってより高いところを売るのが信用取引です。もちろん高いか安いかは投資家個々の判断ですが、その判断に、PER(株価収益率)とPBR(純資産倍率)はよく使われる尺度です。

例えば「PBR0.5倍」の銘柄があったとすると、多くの投資家はこの銘柄に対して割安感を持つと思います。特に、利益がしっかり出ているのに、PBR0.5倍の銘柄だったら、一般的には「割安」と言う表現が使われることはほぼ間違いないでしょう。利益が出ている銘柄ですから次の期にはPBRは更に下がります。0.4倍になったとしますと、「超割安」と言う表現が使われるかも知れませんね。しかし、0.5倍で上がらなかった「割安」株は0.4倍の「超割安」になったからと言って上がる保証はありません。逆に自己資産を経営に利用できない無能経営者のいる会社として、更に敬遠されるかもしれません。赤字会社で無い場合は期を追うごとに資産が蓄積され、更に割安度が増すわけですから、いつかは(いつになるかはわかりませんが)買われることになりますから、この投資法が間違っているとは言えません。ただし、この割安基準で投資する場合は、年単位になりますので、当然現物取引となります。そしてそれは「我慢比べ取引」です。赤字会社に転落しようものならこの投資は負けとなりますが、もし、無能経営陣を取り替えたら優良会社になるとしてM&Aでも始まったら、良い意味で大変な事になります。

現実は、M&A等の材料が出る事はごく稀で、我慢比べに勝つか負けるかの投資になります。従って、割安株投資に信用取引を使う事は大きな間違いで、信用建余力がたっぷりあるからと言って、「3.3倍まで買える現物取引だ」と言う感覚で割安株に投資するのは、もうその時点で負けたも同然です。もちろん、「割安株」「超割安株」に材料が出た時や、業績変化が見え、株価がその動きを織り込み始めたら、その時こそ信用取引で参戦する時です。

PERでも同じことが言えます。PER8倍の銘柄が、10倍になるまで3年もかかったのに、10倍から12倍までは3週間だったなどと言う例は多々あります。信用取引はやはり動いてから、高いところを買ってより高いところを売ると言う基本フォームをしっかり持つべきです。待ち伏せ買いなどもやってはいけません。それは現物取引の世界です。ただし、動き始めたトレンドの「初押し買い」は待ち伏せ買いとは違いますので信用取引の範疇です。

我慢比べや待ち伏せ買いでホールドしていた現物株が動き出した、信用取引発進!という事になると、現物と同じ銘柄を信用でも買う事になります。所謂2階建てとなりますので、リスク管理から好ましくない事になります。投資金額に対して高い比率で2階建てになる場合は、それだけ現物で力を入れて買っていたことになりますから、それは素直に喜んで現物だけの持続で利益を膨らませた方が良いと思います。動き出したから信用取引で更に利益を倍増させようなどと欲を出す事は避けるべきです。2階建てが許容されるのは複数の銘柄をホールドしていた場合です。

しかし、現物で買っていた銘柄が上がり始めたので、信用で買い乗せた事は、トレーディングテクニックとしては間違っていません。買い乗せ(ピラミッティングと言います)と信用取引について次回で勉強いたしましょう。



平野 憲一(ひらの けんいち)
株一筋40年マーケットアナリスト
テレビ・ラジオ・新聞・雑誌など出演多数
日本証券アナリスト協会検定会員

~略歴~
1970年   立花証券株式会社入社
2006年   同社執行役員就任
2014年7月 個人事務所 K ASSET 代表マーケットアナリスト就任

ブログ『平野憲一の株のお話』


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