【資産運用コラム じぶん年金・NISA編】
第4回 国の趨勢に沿った長期投資
2014.12.24
日本経済新聞夕刊のなるほど投資講座で、「生かしたい相場格言」と言う4回連載のコラムを仰せつかりました。既に終わっていますので、立花証券ストックハウスの皆様の中で、見た方もいらっしゃると思いますが、第1回目に選んだ相場格言は「政策には逆らうな」でした。黒田日銀総裁や安倍総理の政策に逆らった売り方が、11月相場で散々な目にあったタイミングを踏まえた選択でしたが、この格言は長期投資の重要なヒントになると思います。
NISAはこれから進化していくと前回述べましたが、今は、5年後に残高枠がピークになる仕組みですので、長期投資と言っても一応5年後をメドにする必要があります。しかしそれでは、個人年金としてNISA口座を考える時、6年目以降が不透明では使い物になりません。
ずっと以前の話になりますが、友人が土地持ち資産家に婿入りしました。その婿入り先が借地権住宅のディベロッパーに勧められて土地を提供する事になりました。莫大な一時金の一部を株で運用しようと思ったらしく、私のところを訪ねて来ました。「長期投資に向く安定した株を教えてくれ」と言うので、「何年くらい?3年?5年?」と聞いたら、真面目な顔をして「50年!」と言われて腰を抜かしそうになりました。
考えたら最もなことで、そのお金は50年後に借地権者に返さなければならないお金だったからです。投資した資金が50年後現在で増えていなければならないからです。真面目な質問だったので私も真面目に考え、武田薬品を買ってもらいました。今私は武田薬品を第1番には選びません(NISA銘柄には入れていますが)。当時は50年後の日本なぞまったく見えていなかったからこそ選ばれたディフェンシブの代表武田薬品だったのです。
「国策に逆らうな」は「政策に資金を乗せろ」と同じことで投資の一つの方法です。しかし、日本の政策は時には変わります。アベノミクスも安倍首相が退陣したら変わります。変わらないのは人口減少と言う日本の趨勢です。
今まで少子化担当大臣は2007年8月27日に就任した上川陽子氏を初代に、現有村治子氏まで15人の大臣が就任しました。青少年育成を混合した少子化対策大臣としては2003年9月22日の小野清子氏から延々と少子化問題に取り組んできましたが、出生率の減少傾向に歯止めがまったく効いていません。
人口減少は年金問題等社会保障の仕組みを危うくするだけでなく、労働力不足として産業を直撃しています。パートやアルバイトの労働力が集まらず、閉店した外食産業のニュースはその一つです。もし今、例の友人が現れたとして「50年間の長期投資で有望銘柄を教えてくれ」と言ったら、自信を持って言えます。「日本の趨勢・人口減少から来る労働力不足に乗る銘柄だよ」と。
労働力不足を解決する簡単な方法は、余っている国から呼んでくる事です。しかし、世界で独り勝ち経済になっているアメリカはそれで成功していますが、ずっと以前から「人種のルツボ」と言われたアメリカだからこそ成功したのであって、同じように移民受け入れ政策をとったドイツやフランスでは今、社会問題・負の遺産となっています。
まして日本の国情からしたら、毎年何十万人も受け入れる移民法など国会で通るはずもありません。せいぜい高度技術者の限定的移民か、現在受け入れているいわゆる職業訓練生の規制を緩め、ビザの期間を延ばすくらいしか考えられません。
従って長期投資の基本は、この日本の趨勢、人口減少・労働力不足の流れから、逃げ出して勝ち残る企業(海外展開企業)か、この趨勢の中で有利に展開できる企業(労働力のミスマッチ解消、労働力に代替する機械)という事になります。
10月に仲間と三人で「NISAで負けない株式投資」を出版させて頂きました。その中のエキスを次回、最終回になりますが、具体的な銘柄紹介を含めて説明させて頂きます。当該企業からの情報や、他の二人の見方も取り入れて、実際の個人年金・NISAの作り方を勉強したいと思います。
平野 憲一(ひらの けんいち) |
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