【資産運用コラム じぶん年金・NISA編】
 第1回 既に始まっている危機

2014.11.12

日本は今、アベノミクス脱デフレ政策で、失われた20年から脱却しつつあります。しかし、経済の回復に対して賃金の増加はまだ低く、物価上昇の負担だけが増大するという事にもなりかねません。国民の消費動向は、消費税導入後の反動が緩やかだと言われていますが、これは駆け込み需要が盛り上がらなかった事の証左でもあります。しかも、増税後の物価上昇は、増税前の物価に増税額を足した数字を下回る状況です。つまり国内の消費マインドはアベノミクスの掛け声ほど盛り上がっていないという事です。国民は、アベノミクスに期待はしているけれども、本心としては将来への不安が拭いきれていないのです。また安定していた安倍政権の陣容にもほころびが見え、今回2閣僚の辞任から、ただでさえ不安視されている成長戦略の実行力に疑問符が付き始めました。しかし何と言っても、将来への不安の最大且つ根本的な要因になっているのは日本の人口減少です。日本政府は2050年に1億人程度の人口維持を防衛ラインとする予測政策を発表していますが、これは今から2700万人の人口が減るという事であり、言い換えれば100万都市が国内で27個も消滅すると言うイメージで考えれば、とんでもなく恐ろしい現実を容認した政策であると言えます。しかもこの予測すら守りきるのは簡単ではないと言う多くの専門家の見方があります。経済的に見ると、アベノミクスの効果でここ2年や3年はインフラ整備・国土強靭化事業での成長があるとしても、オリンピック・パラリンピックが終わる2020年以降の内需の拡大は非常に難しいという事になります。

年金を含めて社会保障システムの将来も明らかに脆弱で、それどころか崩壊の可能性がかなり高いと推測されています。国立社会保障・人口問題研究所の推計によりますと、65歳以上の人口を支える現役世代人口は、1960年には11.2人であったのが1980年に7.4人、2000年に3.9人、2020年には2.2人となり、日本の人口が1億人を割れるかもしれないと言われる2050年には1.5人で年金受給者1人を支える事になります。

すでに年金支給開始年齢を引き上げる議論が政府内で検討されています。健康な人で働きたい人は75歳まで働ける社会基盤を作ろうなどと言う意見も出て来ました。老後生活の選択肢を広げる前向きな政策とも受け取れますが、最終的には年金支給年齢を75歳まで上げる伏線ではないかと勘繰るのは私だけでしょうか。国民一人一人がしっかりとした危機意識を持って自己防衛をしなければ、明るい将来はないという事になります。アベノミクスで短期的にデフレ脱却が出来たとしても、その後に来る困難な時代に、我々は備えなければなりません。しかも、生命保険文化センター「生活保障に関する調査」平成25年度意識調査では、夫婦2人の「老後の最低日常生活費」は平均24.2万円、「ゆとりある老後生活費」は37.9万円と出ています。これに対して、厚生労働省の平均的な年収のサラリーマンを対象にしたモデルケースは、夫婦合わせて21.8万円です。内訳は夫の厚生年金月額9万円、夫の国民年金月額6.4万円、妻の国民年金月額6.4万円で合わせて21.8万円。ゆとりの37.9万円どころか、最低日常生活費24.2万円に届きません。しかもこれは夫婦とも国民年金に40年フルに加入していた場合で、実際には妻の国民年金加入平均年数は30年程度(筆者推定)しかないので、受け取れる妻の国民年金は前述6.4万円の3/4の4.8万円程度になってしまいます。公務員・会社員以外の自営業の人などは国民年金だけなので、満額でも月額6.4万円ということで、生活保障の額よりも低いということになります。このように社会保障システム崩壊の可能性は、将来ではなく現在すでに始まっているのです。

次回「資産運用・NISA重要性の意味」


平野 憲一(ひらの けんいち)
株一筋40年マーケットアナリスト
テレビ・ラジオ・新聞・雑誌など出演多数
日本証券アナリスト協会検定会員

~略歴~
1970年   立花証券株式会社入社
2006年   同社執行役員就任
2014年7月 個人事務所 K ASSET 代表マーケットアナリスト就任

ブログ『平野憲一の株のお話』


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